Taxation Times

April 2025

Introduction

by Anjali Darak
by Anjali Darak

Manager - Direct Tax

この記事では、外国企業がインドにおける恒久的施設(Permanent Establishment:PE)リスクを理解し、予期せぬ課税義務を回避するための包括的なガイダンスを提供します。
PEの概念をはじめ外国企業が意図せずにPEと見なされる可能性がある一般的なケース、そしてそのようなリスクを回避するための実践的な対策について解説します。

この記事がみなさんのお役にたつことを願っています。

また、この記事に関するご意見などがありましたら、info@uja.inまで、お気軽にご連絡ください。

UJA Tax Team

インドでのPEリスク:外国企業が予期せぬ税負担を回避する方法

恒久的施設(PE)は、外国企業のインドにおける事業活動が課税対象となるかどうかを決定する重要な概念であり、国際税務の分野において大きな意味を持っています。 グローバルビジネスの拡大とインドの複雑な税制を踏まえ、外国企業は予期せぬ課税リスクを回避するために常に注意を払う必要があります。 それでは、早速、PEの詳細とともに、意図せずにPEとみなされることのないよう、注意点をご説明しましょう。

PE(恒久的施設)とは?

PEとは、外国企業がインドで事業を行うための恒常的な事業拠点や、従属代理人を指します。インドにPEが存在すると、当該外国企業はインド国内から得た所得に対してインドの課税対象となる可能性があります。

インドで企業が課税リスクとなりうる主なPEの種類は以下の2つです:

  • 固定的施設PEFixed Place PE
    インド国内において事業活動が行われる物理的な場所(例:オフィス、工場、作業所など)
  • 従属代理人PEDependent Agent PE
    外国企業を代表して契約を締結する権限を持つ代理人や代表者が存在する場合に発生するPE

インドにおいてPEリスクがどのように発生するか

外国企業は、以下のような状況で意図せずインドにPEを形成してしまう可能性があります。

  • 固定的施設の設置
    外国企業がインドでオフィス、倉庫、工場などを一定期間(通常6か月以上)運営する場合、固定的施設PEが認定される可能性があります。たとえ「一時的な」オフィスであっても、そこで行われる活動の性質によってはPEと見なされることがあります。
  • 従属代理人の活動
    外国企業のインドにおける代理人が、その企業を代表して継続的に契約の交渉や締結を行っている場合、PEが形成される可能性があります。これは、単なるマーケティングや営業活動を超えた、実質的な契約権限が代理人に委ねられている場合に該当します。
  • 独立代理人とそのリスク
    法律上、独立代理人はPEを構成しないとされています。
    しかし、当該代理人が実質的にその外国企業のために業務を行い、インド国内で契約を締結している場合には、やはりPEリスクが発生する可能性があります。
  • バーチャルな存在とデジタル経済
    近年、企業活動のオンライン化が進む中で、デジタルやバーチャルな事業運営がPEリスクを生じさせる場合があります。
    例えば、外国企業がデジタルプラットフォームを通じてインドでサービスを提供している場合、インドにおける事業の管理状況、デジタル活動の内容、物理的拠点の有無などに応じて、PEが成立する可能性があります。

外国企業がPEリスクを回避するためのステップ

  • 活動内容の明確な文書化:
    PEリスクに対する最初の防御手段は、外国企業がインドで行う活動を詳細に文書化することです。これには契約書、プロジェクト合意書、業務記録などが含まれます。企業はインドにおける業務の範囲を明確に定め、従業員や代理人がその範囲を超えて活動しないよう徹底しましょう。
  • PEを回避するための業務構成
    外国企業は、固定的施設の設置とされるのを回避するために、業務の構成を慎重に設計する必要があります。例えば オフィスや施設の賃貸契約は短期間にする。
    業務活動が許容される滞在期間を超えないようにする。
    従属代理人ではなく独立代理人を通じて業務を行う。
  • 代理人の独立性の確保
    インドで活動する代理人が真に独立していることを確保する必要があります。外国企業は、代理人に契約交渉や締結の権限を与えないようにしなければなりません。代理人の役割はマーケティングなどに限定され、法的拘束力のある意思決定や契約締結には関与させないようにするべきです。
  • 租税条約・二重課税防止協定(DTAA)の確認
    インドは多くの国と租税条約(DTAA)を締結しており、日本とも締結しています。こうした条約は二重課税を回避するとともに、PEリスクに関する明確な定義や免除の規定を含んでいる場合があります。
    外国企業は、インドで事業を構築する前にこれらの協定を慎重に分析する必要があります。
  • 定期的な税務レビューとコンプライアンス
    外国企業は、インドの税法の変更に対応するため、定期的にインドの税務アドバイザーと業務の見直しを行いましょう。特に、OECDのBEPS(税源浸食と利益移転)ガイドラインに関連するインドの税法改正に注目し、想定外の税務リスクを回避することが重要です。
  • テクノロジーと電子商取引に関する考慮
    事業活動がデジタルモデルへと移行する中で、外国企業は自身の仮想的な事業運営やデジタルサービスが、インドでPEリスクを生じさせないかを評価する必要があります。外国のEコマース企業やサービス提供者がインド居住者に商品やサービスを提供することで、意図せずPEを構築してしまう可能性があるからです。企業は、オンラインの事業活動がどこでどのように行っているかを注意深く監視し、バーチャルな存在がインドの税法に準拠していることを確認する必要があります。
  • 業務委託による固定的施設PEの回避
    外国企業は、倉庫保管、流通、組立などの業務をインドの独立した第三者に委託することで、PEリスクを軽減できます。これによりインドでの直接的なプレゼンスを制限し、PEの成立の可能性を下げることができます。
  • 地域統括拠点(RHQ)や連絡事務所の活用
    外国企業は、連絡事務所や地域統括拠点(Regional Headquarter: RHQ)といった組織を通じてインドで活動することが可能です。これらは、活動がプロモーション、市場調査、または調整に厳密に限定されている限り、PEとは見なされません。当然、利益を生み出す活動を行うことはできません。

ケーススタディ:インドにおける外国コンサルティング会社のPEリスク

外国のコンサルティング会社が、短期プロジェクトのために社員をインドに派遣し、その社員たちが現地でクライアントとやり取りを行い、サービスを提供し、業務を監督する場合を考えてみましょう。これらの活動が一定期間継続したり、インドにオフィススペースを設けたりすれば、当該コンサルティング会社は意図してなくてもPEを設立したと判断され、これらの活動によって得られた収益に対して課税される可能性があります。

このコンサルティング会社がこうしたリスクを回避するには、インドでの業務が一時的なもであり、恒久的なオフィスを設置せず、社員の活動が助言にとどまったもので取引的な業務に及ばないことが必要です。

まとめ

インドにおけるPEリスクは、外国企業にとっては慎重な検討と戦略的な対応が求められる複雑な懸念事項です。PEの定義のニュアンスを理解し、インドでの貴社の業務活動を注視し、業務体制を整えることで、意図しない税務上の負担を減らすことができるでしょう。そのためにも、税務アドバイザーに積極的に相談し、定期的なコンプライアンスチェックを行うことをおすすめします。税務アドバイザーとの積極的な協議、定期的なコンプライアンスの確認、インドの租税条約との整合性を確保することで、企業はPEに悩まされることなく、円滑な事業運営を継続することができます。
繰り返しになりますが、進化し続けるデジタル経済や国境を越えた事業活動の広がりを考えると、インドの税法に関する最新情報を把握し、専門家のアドバイスを受けることは、このリスクを乗り越えるうえで極めて重要です。