Taxation Times

税務計画とグリーン投資

Direct Tax - Green Investment and Tax Planning with IREDA Bonds

Introduction

by Anjali Darak
by Anjali Darak

Manager - Direct Tax

インド再生可能エネルギー開発機関(IREDA)は、所得税法第54EC条に基づき、同機関の債券に対して非課税措置が適用されることになりました。これにより、投資家は長期キャピタルゲイン課税の節税が可能となり、同時にインドの再生可能エネルギー産業の成長を支援することになります。これは、税務計画と持続可能な投資の両面でメリットのある措置です。

今月は、「税務計画とグリーン投資の連携:IREDA債券(第54EC条適用)」と題してお届けします。

本記事が、みなさまのお役にたつことを願っています。この記事に関するご意見などがありましたら、info@uja.inまで、お気軽にご連絡ください。

UJA Tax Team

2025年8月作成

税務計画とグリーン投資の連携:IREDA債券(第54EC条適用)

2025年7月9日、インド財務省傘下の中央直接税委員会(CBDT)は、インド再生可能エネルギー開発公社(IREDA)が発行する債券を、所得税法1961年第54EC条における「長期特定資産(long-term specified asset)」として正式に指定したことを発表しました。

政府による公式通知は以下のとおりです:

「所得税法(1961年法律第43号)第54EC条の解説のba項に定める権限に基づき、 中央政府は、本通知の日付以降に発行されるIREDA(非銀行系金融機関として設立された公的有限責任会社)が発行する5年満期の償還債券を、同条における『長期特定資産』として指定する。

IREDAは、当該債券の発行により得た資金を、州政府の債務返済に依存することなく、プロジェクト収入から債務を返済できる再生可能エネルギープロジェクトにのみ使用するものとする」

IREDAとは?

  • インド再生可能エネルギー開発公社(IREDA)は、新・再生可能エネルギー省(MNRE)の行政管轄下にあるインド政府の「ナヴラトナ」企業(優良政府系企業)です
  • IREDAはニューデリーに本社を置き、全国で活動しています
  • ミッションは、モットーである「ENERGY FOR EVER」のもと、再生可能エネルギーとエネルギー効率化プロジェクトの資金調達を進めることです
  • インドのグリーンファイナンスの基盤として、全国でクリーンエネルギープロジェクトの低コスト資金調達を可能にしています

所得税法1961年第54EC条とは?

  • この条項は、土地または建物の売却による長期キャピタルゲインを、売却後6カ月内に指定された債券に再投資した場合、キャピタルゲイン税の免除を認めています。
  • 長期キャピタルゲインを再投資できる指定債券は、以下の機関が発行するものです:
    • REC(農村電気化公社)
    • PFC(電力金融公社)
    • IRFC(インド鉄道金融公社)
    • NHAI(インド国家高速道路公社)
    • さらに、新たな発行者は政府指定の機関であり、最近54ECの適用対象となったIREDA債券などが該当します。
  • これらの債券の利息は通常年利5~6%で、受取人の課税対象となります。

54EC債券への投資の条件と特徴:

  • 6カ月以内の投資: 土地または建物の売却から6カ月以内にこれらの債券に投資する必要があります。
  • ロックイン期間: 最低でも5年間の保有が必要です。途中解約すると、第54EC条に基づく免税の権利が無効になります。
  • 投資限度額: 1会計年度あたり最大500万ルピー。
  • 免税額:以下のいずれかのうち、最も低い金額が免税対象となります
    • キャピタルゲイン総額
    • 投資額
    • 500万ルピー
  • 5年間の保有期間満了後に債券を償還すれば、元本部分に対する譲渡益課税は免除されます。ただし、通常付与される年率5~6%の利息収入は「その他の収入」として毎年課税対象です。

IREDA債券への投資例

  • Aさんが2025年5月1日に住宅用不動産を売却し、長期キャピタルゲインとして700万ルピーを得たとしましょう。Aさんはキャピタルゲイン税を節税するために、54EC対象債権に6か月間(2025年11月1日まで)投資できます。
  • IREDA債券が指定された場合:

i)Aさんは500万ルピーをIREDA債券(2025年7月9日以降に発行されたもの)に投資します。

ii)Aさんは500万ルピーのLTCGに対する免除を申請します。

iii)残りの200万ルピーはLTCGのルールに従って課税されます。

IREDA債券への投資のメリット:

  • 再生可能エネルギープロジェクトへの支援:
    IREDA
    債で集められた資金は、州政府の補助金に依存しない自立型の再生可能エネルギー事業にのみ活用されます。
  • IREDAの資金調達コストの低減:
    税制優遇措置を通じて投資家の関心をたかめることで、IREDAはより低コストで資金を調達できるようになります。これにより、クリーンエネルギー関連インフラの迅速な資金供給を可能にします。
  • ESG要素を組み込んだポートフォリオの多様化:
    IREDA債券は、環境、社会、ガバナンス(ESG)に配慮した固定利回り型商品です。ポートフォリオにサステナブルな選択肢を加えたい投資家に最適です。
  • 政府機関による信頼性:
    インド政府傘下にある公的機関であるIREDAの債券は、高い信用力を有し、低リスクの投資先として評価されています。
  • 再生可能エネルギー目標の推進:
    IREDA債で調達された資金は、再生可能エネルギープロジェクトの規模拡大と加速に直結します。これは、2030年までに非化石燃料発電容量500GWを達成するというインド政府の目標の実現を後押しすると同時に、IREDAが掲げる資産総額3.5兆ルピー達成にも寄与します。

まとめ

投資家と地球の双方に利益をもたらす

IREDA債が所得税法第54EC条の対象に指定されたことは、税制優遇措置を通じて資産売却益を気候変動対策に向ける画期的な政策と言えます。譲渡益をグリーンインフラへと再投資するこの仕組みは、インドのグリーン転換に貢献する重要な一歩であるとともに、投資家にとっても安定的かつ意義ある節税手段となります。

環境意識の高まりとともに、IREDA 54EC債は気候変動を意識した投資家の新たな主力商品として注目される可能性があります。これは、持続可能な未来に向けた金融的な土台作りでもあるのです。