Manager - Direct Tax
インドではノンバンク金融会社(NBFC)が、個人や企業に対して幅広い分野で融資を行う重要な金融仲介機関として台頭しています。こうした役割の拡大に伴い、政府は税務コンプライアンスの基準を強化しており、特に利子支払いにかかる源泉徴収(TDS)を定めた所得税法第194A条のもとでの規制が厳格化されています。 本記事では、NBFCに対するTDSの適用範囲、遵守すべき要件、最近の改正点、そして実務上の課題について包括的に解説します。
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UJA Tax Team
2025年9月作成
インドの進化する金融環境において、NBFCは、従来の銀行のサービスが十分に行き届かない個人や企業への信用格差を埋める重要な役割を果たす存在として台頭してきました。その柔軟性、広範なネットワーク、革新的な融資モデルは、中小企業、消費者金融、農村金融など、多様な分野において不可欠な存在となっています。
しかし、この影響力の拡大に伴い、特に税制分野における規制・監督が強化されています。特に懸念されているのが、NBFCへの利息支払いに適用される源泉徴収税(TDS)の適用範囲です。銀行や一部の金融機関は所得税法第194A条の免除対象ですが、NBFCはTDS規定の適用対象であり、借主は利息支払いに際して、税金を源泉徴収し政府に納付する義務があります。
本記事では、NBFCに対するTDSに関する法的枠組み、遵守要件、実践上の課題、および2025~26年度における最新の動向を詳細に解説し、この複雑な領域をナビゲートします。
所得税法第194A条は、インド居住者に対する利息の支払い(有価証券の利息を除く)に対してTDSを課すことを定めています。銀行、保険会社および特定の機関は免除されていますが、NBFCは、受け取った利息に対して10%の税金が課されるため、利息を支払う借り手が源泉徴収し、政府に納める必要があります。
主な適用ポイント:
項目 | 内容 |
支払元 | 個人(監査対象)、HUFs(※)、企業 |
支払先 | RBIに登録されているNBFC |
所得の種類 | 利息(有価証券を除く) |
閾値 | 10,000 ルピー(一般), 50,000ルピー (銀行から借りた高齢者), 40,000 ルピー(銀行から借りた高齢者以外の借主) |
TDS Rate | 10% (PANあり), 20% (PANなし) |
※HUFs: ヒンドゥー教の共同家族。ヒンドゥー法に基づく「一つの家族単位(共同体)」。家族全体で財産を所有・管理する仕組み
財務法2025により、第194A条に基づくTDSの閾値が改定されました。
この変更は、コンプライアンスの簡素化と課税対象の拡大を目的としています。
NBFCへの利息を支払う借り手に対して、TDSに関する手順が以下のように定められています。
プロセス:
明確な法的義務があるにも関わらず、実務面で次のような課題に直面しています。
TDSの控除または納付を怠ると、以下の結果を招く可能性があります:
ある会社が12%の利息で500万ルピーを借り入れたとしましょう。
TDSが徴収されていない場合
TDSコンプライアンスを簡素化するため、政府は以下の措置を講じています:
第194A条にNBFCが適用対象として加えられたことは、インドの税制における重要な変化となります。これは透明性と説明責任を促進する一方で、借り手に対して運用上の課題も課すことになります。企業は、罰則を回避し税務コンプライアンスを維持するために、強固なシステムを導入し、法改正の最新情報を把握し、積極的にTDS義務を管理する必要があります。