Taxation Times

March 2025

Introduction

by Anjali Darak
by Anjali Darak

Manager - Direct Tax

インドのスタートアップエコシステムは、イノベーション、起業家精神、政府の施策によって成長を続けています。2025年度の連邦予算において、ニルマラ・シタラマン財務大臣は、この急成長する分野をさらに支援するための一連の税制改革を導入しました。

スタートアップ向けの新しい税制では、若い企業の支援、税負担の軽減、長期的な持続可能性の促進を目的としたさまざまな優遇措置が設けられています。しかし、あらゆる改革と同様に、この制度を最大限に活用するためには、スタートアップがその機会と課題を正しく理解することが重要です。

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UJA Tax Team

スタートアップのための新たな税制の理解:機会と課題

2025年度予算で導入されたスタートアップ向け新税制を掘り下げていきましょう。
2025年度の予算では、スタートアップ向けに税率の引き下げ、税制優遇措置、政府の起業・イノベーション支援が盛り込まれています。本記事では、新税制の主な特徴、スタートアップにとっての機会、実施に伴う課題について詳しく解説します。税制の変化を理解することで、スタートアップは競争の激しい市場で成功するための適切な意思決定が可能になります。

スタートアップ向け新税制の主な特徴

2025年度の税制改正は、スタートアップエコシステムを世界的に競争力のあるものにすることを目的としています。主なポイントは以下の通りです。

法人税率の引き下げ

  • 新設スタートアップの法人税率15%

    2025年度の税制の目玉の1つは、法人税率の15%への引き下げです。以前の規定では、2024年3月31日までに製造を開始したスタートアップが適用とされていましたが、2025年度の改正により対象範囲が拡大しました。 

  • 適用条件
    適用を受けるには、2019年10月1日以降に設立・登録され、2025年3月31日までに製造を開始している必要があります。一定の条件を満たせば、引き続き15%の低税率を選択が可能です。

税制優遇措置

  • 設立後5年間の税制優遇

    スタートアップの税制優遇の適用期限が2030年3月31日まで延長されました。この制度は、スタートアップ企業がより事業の成長とイノベーションに集中できるよう、法人税以外の税率の減免といった優遇措置を拡充したものです。

  • 損失の繰越控除

    設立から10年間は、損失を繰り越せる制度を導入。赤字であっても、将来の利益と相殺することができます。

簡素化されたコンプライアンスと申告手続き

  • 簡素化された税務申告

政府は、新規起業家のコンプライアンス負担を軽減するため、税務申告の簡素化を進めています。デジタルプラットフォームやAIを活用することで、税務申告や記録管理の手続きがスムーズになります。

  • 税務監査の基準緩和

該当するスタートアップに対し、税務監査の義務となる売上基準を引き上げることで、事業初期の頻繁な監査を回避できるようにしています。

設備投資やインフラ投資の減価償却優遇

  • スタートアップが設備やインフラ、テクノロジーに投資する場合、減価償却率を引き上げ、課税対象所得を削減できるようになりました。特に製造業や再生可能エネルギーなど、設備投資が必要な業種にとってメリットがあります。

スタートアップにとっての機会

新しい税制は、スタートアップがより迅速に成長し、財務状況を改善するためのさまざまな機会をもたらします。

  • キャッシュフローを向上させて再投資へ

法人税の引き下げや税制優遇措置により、スタートアップは初期の利益をより多く再投資できます。これにより、研究開発、マーケティング、人材採用、事業拡大への資金投入が可能になります。

  • 投資家の信頼向上

税制優遇は、国内外の投資家にとってインドのスタートアップ市場をより魅力的にする要因となります。税制が有利な環境は投資リスクを軽減し、投資回収の期待値を高めるため、より多くの資金調達の可能性が生まれます。

  • 長期的成長にフォーカス

税負担が軽減されることで、スタートアップは短期的な財務負担を気にせず、長期的な成長戦略を推進できます。これにより、イノベーション、インフラ整備、新市場開拓への投資が促進されます。

  • 特定分野の成長促進

政府は、クリーンエネルギー、テクノロジーなどの成長分野を重点支援しています。これらの分野のスタートアップは、加速減価償却や投資連動型インセンティブといった追加のメリットを受けられます。

直面する可能性のある課題

新しい税制が莫大な利点をもたらす一方で、スタートアップ企業はこれらの改定が起こしうる課題に注意が必要です。

  • 複雑な適用条件の把握

税制優遇を受けるには、設立日、業種、売上基準など、特定の条件を満たす必要があります。条件を満たさない場合、税制優遇の適用外となる可能性があるため、慎重に確認しましょう。

  • 簡素化された手続きでもコンプライアンス維持が必要

税務申告が簡素化されたとはいえ、税制変更や新しい規制を適切に把握し、コンプライアンスを維持することが不可欠です。最新のガイドラインや申告要件に対応しないと、ペナルティや優遇措置の喪失につながるおそれがあります。

  • 技術・インフラ投資への負担

減価償却優遇を受けるには、設備、インフラ、テクノロジーへの投資が必要ですが、初期段階のスタートアップにとっては資金調達が課題になることも考えられます。

  • 政府施策への依存

税制優遇は政府の方針に依存するため、将来の政策変更によって制度が変わる可能性があります。長期的な財務計画を立てる際には、政策リスクを考慮することが重要です。

  • 税制優遇の認知不足

多くのスタートアップは、利用可能な税制優遇措置について十分に理解していない可能性があります。適切に活用するには、税務専門家のアドバイスを受けることが不可欠です。

まとめ

2025年度の新税制は、スタートアップの成長を支援し、起業やイノベーションを促進するために設計されています。法人税の引き下げや簡素化されたコンプライアンス制度により、インドのスタートアップエコシステムはより競争力のある環境へと変化しています。

しかし、新税制のメリットを最大限に活用するには、適用条件やコンプライアンス要件を適切に理解することが不可欠です。今後の成長を見据え、税制の詳細を学び、専門家の助言を受けながら最適な財務戦略を構築することが重要となります。

こうした取り組みにより、スタートアップは激化する競争環境の中で成功を収める可能性を大いに高めることができるでしょう。